2003.3.24
アメリカで「モニカ・ルインスキーを返せ」というス テッカーが流行しているとの事。大賛成。クリントンは助平だったかも知れないがこんな馬鹿な事はしなかった。ポリティカル・コレクトはもうたくさんです。 善人ぶった「信念の人」が国を滅ぼすことは、与謝野晶子が「悲しからず哉道を説く君」と詠ったとおり。それにしてもこのステッカーを見てみたいな。
"Rendez-nous Monica Lewinsky ": l'autocollant pacifiste de Philip Roth (2003.3.22)
「モニカ・ルインスキーを返せ」;フィリップ・ロスの 平和運動ステッカー
ニューヨーク特派員報告
アメリカ市民がイラク戦争に抗議する方法は無数にあ る。デモに参加したり、インターネットで意見を発信したり、上着の襟にバッジを付けたり「戦争反対」のステッカーを車のフロントガラスに貼り付けたりす る。
知識人や、芸術家もそうである。73歳になった今もミ ルトン・グラサーはマンハッタンのグラフィックスタジオで非常に活発に芸術活動を続けているが、最近作家のフィリップ・ロスから「君の助けがいるんだよ」 と電話を貰った。
この『人間のしみ (The Human Stain)』の著者である有名な作家は、同じく有名な「I love Ney York」のスローガン(「love 」をハートマークで置き換えたもの)をデザインしたグラサーに「モニカ・ルインスキーを返せ (Bring back Monica Lewinsky)」という言葉を入れたステッカーのデザインを頼んできたのだ。出来上がったものは、素晴らしく、ちょっとひねった辛辣なもので、青地に 白抜きの文字で書かれたものだ。これをバンパースティッカーにしたものは、この二人の友人達のインフォーマルネットのおかげで大いに流行っているとの事で ある。
誰もがこの言葉を読んで1998年の夏の事を思い出 す。ホワイトハウスの研修生をめぐるスキャンダルでアメリカの大統領の罷免手続きにまで発展した件である。この時の大統領がしでかした間違いの深刻さは、 またクリントンが嘘を付いた事の重大さは、現在ジョージ・ブッシュがこの国を誰もが出口を見えない紛争に引きずり込んだ事の深刻さとは比較にならないもの だ。フィリップ・ロスによれば、かれが『人間のしみ』に描いたようにこのモニカ事件はアメリカ社会の現状を象徴するものである。彼の言葉を借りれば「馬鹿 げたポリティカル・コレクトネスという言葉のもとにすべてが押しつぶされ、矮小化され、低俗化してしまうのだ」。ロスによればこれは「礼儀作法による専 制」であり、今日アメリカはこれによって身動きの取れないような状況に追い込まれている。個人レベルでまた集団レベルで昔風の抗議やお叱りがまた再び表面 化してきたという。一方ミルトン・グラサーは、自分の信条を文章に書いた事は今までないが、最近の「ネイション」誌で反戦運動の支持を表明した。
インターネットジャーナルのサイト (www.thenation.com)では数々のバッジが販売されている。「秘密は独裁につながる」とか「意見の対立は民主主義を守る」とか「監視は自 由を奪う」とか、或いは単に「オイル戦争」とかである。ある1865年以来の反権威雑誌は読者に「袖に血が流れるハートを付けよう」と呼びかけた。ミルト ン・グラサーは9月11日事件の後「I love Ney York」の言葉の後に「More than ever」を付け加えたが、モニカのステッカーでフィリップ・ロスは、彼の辛辣なやり方で、「今まで以上に(More than ever)」愛国心を発揮しようとしている。
Michèle Champenois
• ARTICLE PARU DANS L'EDITION DU 22.03.03
アメリカで「モニカ・ルインスキーを返せ」というス テッカーが流行しているとの事。大賛成。クリントンは助平だったかも知れないがこんな馬鹿な事はしなかった。ポリティカル・コレクトはもうたくさんです。 善人ぶった「信念の人」が国を滅ぼすことは、与謝野晶子が「悲しからず哉道を説く君」と詠ったとおり。それにしてもこのステッカーを見てみたいな。
"Rendez-nous Monica Lewinsky ": l'autocollant pacifiste de Philip Roth (2003.3.22)
「モニカ・ルインスキーを返せ」;フィリップ・ロスの 平和運動ステッカー
ニューヨーク特派員報告
アメリカ市民がイラク戦争に抗議する方法は無数にあ る。デモに参加したり、インターネットで意見を発信したり、上着の襟にバッジを付けたり「戦争反対」のステッカーを車のフロントガラスに貼り付けたりす る。
知識人や、芸術家もそうである。73歳になった今もミ ルトン・グラサーはマンハッタンのグラフィックスタジオで非常に活発に芸術活動を続けているが、最近作家のフィリップ・ロスから「君の助けがいるんだよ」 と電話を貰った。
この『人間のしみ (The Human Stain)』の著者である有名な作家は、同じく有名な「I love Ney York」のスローガン(「love 」をハートマークで置き換えたもの)をデザインしたグラサーに「モニカ・ルインスキーを返せ (Bring back Monica Lewinsky)」という言葉を入れたステッカーのデザインを頼んできたのだ。出来上がったものは、素晴らしく、ちょっとひねった辛辣なもので、青地に 白抜きの文字で書かれたものだ。これをバンパースティッカーにしたものは、この二人の友人達のインフォーマルネットのおかげで大いに流行っているとの事で ある。
誰もがこの言葉を読んで1998年の夏の事を思い出 す。ホワイトハウスの研修生をめぐるスキャンダルでアメリカの大統領の罷免手続きにまで発展した件である。この時の大統領がしでかした間違いの深刻さは、 またクリントンが嘘を付いた事の重大さは、現在ジョージ・ブッシュがこの国を誰もが出口を見えない紛争に引きずり込んだ事の深刻さとは比較にならないもの だ。フィリップ・ロスによれば、かれが『人間のしみ』に描いたようにこのモニカ事件はアメリカ社会の現状を象徴するものである。彼の言葉を借りれば「馬鹿 げたポリティカル・コレクトネスという言葉のもとにすべてが押しつぶされ、矮小化され、低俗化してしまうのだ」。ロスによればこれは「礼儀作法による専 制」であり、今日アメリカはこれによって身動きの取れないような状況に追い込まれている。個人レベルでまた集団レベルで昔風の抗議やお叱りがまた再び表面 化してきたという。一方ミルトン・グラサーは、自分の信条を文章に書いた事は今までないが、最近の「ネイション」誌で反戦運動の支持を表明した。
インターネットジャーナルのサイト (www.thenation.com)では数々のバッジが販売されている。「秘密は独裁につながる」とか「意見の対立は民主主義を守る」とか「監視は自 由を奪う」とか、或いは単に「オイル戦争」とかである。ある1865年以来の反権威雑誌は読者に「袖に血が流れるハートを付けよう」と呼びかけた。ミルト ン・グラサーは9月11日事件の後「I love Ney York」の言葉の後に「More than ever」を付け加えたが、モニカのステッカーでフィリップ・ロスは、彼の辛辣なやり方で、「今まで以上に(More than ever)」愛国心を発揮しようとしている。
Michèle Champenois
• ARTICLE PARU DANS L'EDITION DU 22.03.03